ティラク・サマラウィクレマが自らのデザイナーとしての歩みを綴った一冊で、副題にはArt, Craft, Architectureと付けられている。本書はおよそ40年にわたる活動を扱っており、ひとつの分野にとどまることなく、彼が手がけてきた複数の領域を横断していく。
本書が取り上げるのは、国立デザインセンター(National Design Centre)への関与、Talaguneの織り手たちとともに制作したタペストリー、シンハラ書法の形に着想を得た線描作品、そして個人住宅から工業・商業建築にまで及ぶ建築プロジェクトである。この四つの軸が本書の構成を形づくっている。読者は最初から最後まで、ひとりのデザイナーが工芸、グラフィック、建築のあいだを行き来する姿をたどることになり、それぞれの領域のつながりは外部の評者によるものではなく、著者自身の視点によるものである。
サマラウィクレマが語るのは自らが手がけた仕事であるため、本書は一貫して当事者の視点で書かれている。これはスリランカのデザイン全般を論じる概説や批評研究ではなく、デザイナー自身が、何を、どこで、誰とともに行ったかを記した記録である。Talaguneでの織物制作は、それを立ち上げた本人によって語られ、建築物は、それを設計した本人によって語られる。
英語版はコロンボの老舗出版社Vijitha Yapa Publicationsから刊行されている。同社はフィクション・ノンフィクションを問わず、スリランカに関わる題材を幅広く扱ってきた出版社である。本書はその中でも建築・デザインの棚に位置づけられるが、その関心は建築にとどまらず、染織工芸やグラフィックアートにも及んでいる。
本書は、近現代のスリランカのデザインや建築に関心を持つ読者、島の工芸の伝統とそれが現代の制作へどのように受け継がれてきたかを学ぶ学生、そしてサマラウィクレマのタペストリーや線描作品に触れたことがあり、その成り立ちを知りたいと考える人に向いている。海外の読者にとっては、英語では他にあまり詳しく記録されていないスリランカのデザイン作品群について、直接的な情報源となる一冊である。
- 著者: Tilak Samarawickrema
- 出版社: Vijitha Yapa
- 言語: 英語
- ページ数: 264
- ISBN: 9789556651805
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